School situation学校の様子

考える道徳―自分事としてとらえ、仲間と考えを交流しよう―

 5月9日(金)1校時、1年生の道徳では、「山に来る資格がない」(東京書籍)という教材を使い、仲間との共同生活について考えました。

 まず、「『~したい』という思いに負けてしまったことはないか」という問いについて、自分の経験を振り返り、クラスで交流しました。「ゲームをするときに、ついつい決めていた時間を超えてしまう」など、中学生らしいエピソードが語られていました。

 「山に来る資格がない」のあらすじは…
 2泊3日の宿泊行事で妙高高原にやってきた主人公たち。3日目の早朝に出発する妙高登山が、今回の宿泊学習の一番のねらいである。2日目の夜、先生から「翌朝3時20分に起床。用意でき次第ねむるように」と言われた。しかし、主人公ら5人はすぐにねむれず、「トランプをやろう」ということになる。彼らは先生にお願いするが、先生は「よし」とは言わなかった。5人はこっそりトランプをし、夜更かしをしてしまう。
 翌日、5人は疲れが目立ち、頂上では素晴らしい景色も目に入らず、下山時には何度も転んだ。それでも5人は歩き通し、満足だった。「よく歩いた」「すごい忍耐力」とほめてくれる人もいたが、ある班の班長が「ぼくは、そんなことはちっとも偉いと思わない。彼らは山に来る資格がない」と言った。

 1年生では、6月に1泊2日で滋賀県近江八幡市に湖畔学習に行きます。いかだ作りにいかだレース、キャンプファイヤー、飯盒炊爨、市内観光など多くの活動をします。そのときにどんなことを大切にするべきか。今回の教材を自分事としてとらえ、仲間と考えを交流しました。

 本文の中で、5人がトランプをすることを先生に認めてもらうように、次の「 」のような理由を言い合う場面があります。それらの発言について、自分なら「共感できる」「共感できない」かを、理由とともに考えました。

「すぐに起きなければならないなら、起きておいたほうがよい」
「夜にトランプで楽しむのも、今回の行事の目的」
「自分たちの体力を試すよい機会。忍耐力も養える」
「中学生だから自由がほしい。何かあっても僕たちで助け合えばよい」
「ほかの人に、騒いで迷惑をかけない」

 生徒たちはロイロノートのアンケート機能を活用し、「共感できる」「共感できない」それぞれの立場で、考えを表出した仲間の意見を聞き合いました。

 「共感できる」派
・仲を深めるのも、この行事の目的だから。
・自分たちで責任をとり、他の人に迷惑をかけなければよいと思うから。

「共感できない」派
・夜しっかり寝ないといいパフォーマンスができないから。
・中学生だからといって、自由に何でもできるわけではないから。

 少数派の意見であっても、一人一人の考えを尊重し合う姿が見られ、多くの生徒たちが自分の意見を臆することなく、伝え合うことができました。

 授業の最後には、今回の学びを通して、6月の湖畔学習で「大切にすべきこと」についてそれぞれ考えをまとめました。 

 このように生徒たちはジレンマを促す問いについて、仲間とともに考え、交流し合うことで、実生活に生きる道徳的価値や気づきを得ていきます。教員も、最初から「こういうときにはこうしましょう」と説くのではなく、生徒に自分事として考えさせることを通して、深い学びに導けるよう授業づくりの工夫をしています。