総合的な学習の時間 MET学習のまとめ2011
MET(総合的な学習の時間)ガイダンス資料の冒頭に次のような文があります。 ![]() みなさんは「学校へ何をするために来ますか?」と問われたら、どのように答えますか。お弁当を食べるため、友達と遊ぶため等の答えがあると思いますが、あらたまって問われたら、ほとんどの人は「勉強するため」と答えるでしょう。ところで、「勉強する」という言葉を別の言葉で言い換えるとしたら、どう言い換えますか。そう、「学ぶ」という言葉があります。では「勉強する」ことと「学ぶ」ことは、どう違うのでしょうか。国語辞典で「勉強」を引くと、「学業に精を出して励む」とありますが、「学ぶ」を引くと「勉強する」とありますので、結局どちらも似たような意味に使われていることがわかります。 しかし「勉強する」という言葉と「学ぶ」と言う二つの言葉が与えるイメージは、ずいぶん違うと思います。「勉強する」のほうは、漢字からも連想されるように「勉めて強いる」、つまり何か他にやりたい(食べたい、遊びたい)ことがあるけれど、それらを我慢してガンバルというイメージがあります。それに対して「学ぶ」のほうは、もっと能動的と言うか、自ら進んで学びたいから学ぶというイメージがあります。METの時間は、勉強するのではなく、学んでほしいのです。「勉強」ではなく、「学び」であってほしいのです。「学ぶ」という行いを、もう一度日ごろの生活や体験とつなげて進めてください。METの時間には、@自分たちで企画し実行する。A学年が異なる人とも協力する。Bものをつくる、育てるなどの体験をする。C友達のよさを認め合う といったことを大切にしてほしいと思っています。 平成23年度より小学校では新学習指導要領による教育が始まっています。平成24年度からは中学校のすべての教科と高校の数学、理科で始まっています。これからの教育は「ゆとり」でも「詰め込み」でもありません。自ら課題を見つけ、自ら学び、自ら考えて行動し学習します。まさに、「主体性のある学習や活動」が求められます。自らを律し、他人と協調し、他人を思いやる豊かな人間性をやしない、知・徳・体のバランスがとれた「生きる力」の育成が必要といわれています。今まで以上に「主体性のある学習や活動」ができるような、自己肯定感を高める取り組みが求められます。 総合的な学習の時間は、「何をしたか」より「どのような力がついたか」が問われます。「少人数グループの活用」「個々が活躍できる場づくりの工夫」「お互いを認めあえる場づくりの工夫」など、まさに、主体的な学びを生み出す学習環境をつくりやすい時間といえます。新学習指導要領がスタートする今、総合的な学習の時間のさらなる活用が必要です。さらに、生徒の主体的な活動を促しつつ、新教育課程でいうところの「思考力」「判断力」「表現力」「人間関係力」を高めていけるような学習内容へと、改良を加えていくことも求められます。 平成24年3月に、「総合的な学習の時間 MET学習のまとめ」 と題した報告書を作成しました。MET学習の取り組みについて、報告書の冒頭文を用いて、本校がおこなっている総合的な学習の時間を紹介します。 |
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T 本校の総合的な学習 METについて 1 はじめに MET学習とは、本校の総合的な学習の中心をなす学習である。 本校では、平成9年の教育課程審議会発表の中間まとめにもとづいて、本校の総合的な学習の時間を構想した。そして平成10年度より教育課程に総合的な学習の時間を位置づけて、今日まで14年間その実践を重ねてきた。 なお平成24年度から新指導要領によるところの教育課程が実施されることになり、本校の総合的な学習の時間も、新指導要領に基づく時間数・内容のもので再構築し、平成22年度から新たな一歩を踏み出した。そこで今回、本校が進めているMET学習の活動をまとめることで、今後さらに本学習を充実・発展させたものにしていきたいと考えている。 2 本校の「総合的な学習の時間」と「MET」 本校の総合的な学習の時間は、学年毎に学習を積み上げる学年進行型の学習<共通必修による学習>と、異学年混在型の学習<選択応用の学習=MET>という形態の異なる学習、コンピュータ操作の技能習熟を主とした学習<ION>から成り立っている。 |
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これは、総合的な学習を、 @主体的・創造的な課題解決能力としての自己学習力の育成 A学び方やものの考え方(情報の集め方、調べ方、まとめ方等)の習得 B教育課程の全体を通して身につけた知識や技能の総合力の育成 ととらえ、これらのねらいを達成するためには、同一課題であっても様々な方法・角度・手段からアプローチをすることがよいと考え、このような学びの構成としたのである。とくに<共通必修>と<MET>という学習は、同学年対異学年による学習、また全員による基礎基本の習得対個人選択による応用・探究学習という違いを持たせることで、「学び」の内容と方法の両面からの質的なレベルアップをはかろうとするものである。 なお、平成24年度から総合的な学習の時間が縮減されることになり、本校でも、平成22年度より、これまでおこなってきた3年:84時間、2年:77時間、1年:75時間の総合的な学習の時間を、平成24年度からのカリキュラムに合わせて各学年で減らした。これに伴い、本校のMET・共通必修・IONの学習時間の割り振りも設定し直した。それぞれの時間を下に示したが、総合的な学習の総時間数が減ったにもかかわらず、METは以前同様の時間数となっている。このように設定したのは、METが本校の生徒に探究的な学びをさせる学習時間として、また生徒の個性を伸長させる学習時間として必要であるという考えによるものである。 |
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(1)MET〈メット〉とは MET〈メット〉 とは、「桃山の探検者たちの学習時間」を意味するMomoyama Explorers' Timeの略称で、本校の総合的な学習の中心をなす教育活動である。体験的・応用的活動を時間をかけておこなう課題探究の時間で、コース選択型のグループ学習を基本としている。2学期の毎週水曜日の5・6限が活動時間で、全28時間を設定している。この時間は、2年生と3年生が共に学習を進める、縦割り・異学年制の学習形態である。 取り上げる内容は、<環境><国際理解><福祉・健康><生き方>である。これらの領域は、これまで本校が大切にしてきた学習内容であるというだけでなく、教科を横断した学びができること、さらにこれらは答えや解き方がひとつではないところが総合的な学習の内容にふさわしいと考えている。 教員が各々1コースずつ担当するため、毎年ほぼ15コースを開設している。 なお、1年生は同時間帯に<PreMET>という名で学習を進めている。学年単位や1年生どうしのグループで、地元伏見をフィールドにして、課題設定の仕方や調査研究の仕方、研究成果のまとめ方など、課題解決学習の基礎を学ばせる。概ね1年の担任団6名が担当している。 (2) 共通必修とは 選択応用<MET>は縦割り異学年制、内容は体験的・応用的なものであるのに対して、共通必修は全員が履修する。学習内容は<環境><国際理解><福祉・健康><生き方>の領域で、現代的な課題や生徒の実態を考慮して全員に出合わせたい内容とし、学年単位で学習をおこなうことが基本である。時間割設定の関係で、学習する学期に制約があるが、学活などと入れ替えて 柔軟に対応している。 |
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教科および共通必修で学んだことをMETで発展的に学び直す、あるいはMETの学習成果や問題意識を教科および共通必修の学びに反映するといった双方向の学び合いが成立し、学習者が主体的に意思決定して学習を展開できると考えている。 |
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(3) IONとは ION〈イオン〉とは、<Information>< Communication>< Presentation>のそれぞれの単語の末尾をとって生まれた本校情報教育の呼称である。1年生では、ID取得やパスワードの設定という基本操作からコンピュータの基本的な機能(ワープロ、表計算など)の使い方、2年生ではワード・エクセルの活用に関する学習を、3年生ではインターネットを使った調べ学習やコンピュータを利用したプレゼンテーションの方法やホームページ作成の基礎を学ぶ。 一方METに、どの領域にも属さないGWSという1つのセクションを設定しているが、このGWSは情報教育の成果における生徒の情報処理・活用能力をさらに伸ばす学習の場として位置づけている。この意味からもIONは、その活用能力の基礎基本を学ぶ場として意義がある。 |
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![]() (1)本年度の開設コースと日程 本年度は右表の15コースを開設した。15コースの開設というのは、教員数や使用可能教室などの関係で、開設できる上限数ではあるが、多様な生徒の学びに対応したいという教員の思いがあり、上限数を開設している。
6月27日:METガイダンス、コース希望登録。その後コース決定。 2 学 期 :毎水曜日5・6限活動。 12月16日:MET全体発表会、評価。 1月31日:コースA3まとめ提出、校内掲示。 |
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(2)コースの設計視点 コース選択にあたって コース担当者は、<環境><国際理解><福祉・健康><生き方>のいずれかの領域に関する内容を題材として、コース設定および設計をおこなう。 @多様な「学習課題」「学習形態・集団」「学習方法」「指導体制」 A体験的な学習 B生徒による主体性 C豊かな環境、教材・教具 がその視点であるが、さらに次の3点に配慮した活動をおこなうよう申し合わせている。 @Active:生徒の主体的な体験活動を重視する ACollaborative:生徒同士の協働、協創的活動を重視する BCommunicative:報告・発表・討論の仕方などの活動を重視する 外部講師を招聘したり、校外へ出ての施設見学や調査活動、また学校周辺地域の調査なども、これら視点のひとつである。 上記を取り入れた活動をコース開設段階で設計し、全教員で共有している。このようにして、より密度の濃い学習活動が組み立てられるようにしている。 これら設計視点が6月におこなわれる生徒のガイダンス資料となる。生徒はこの資料を見て、希望コースを選択する。 |
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各コースが約20名の受講生となるように、希望を重ねていく。 | ||||||||
【ガイダンス資料 <コース紹介文と設計視点>】![]() ![]() |
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(3)METの特徴 学び合いと表現力育成のしかけ 異学年制チームによる共同学習は、他者から学ぶ、他者とともに学ぶということを大事にしたいとの考えによる。各コースで数名ずつのグループを作り、チームとしてグループ毎に設定したテーマに基づいて課題を考え、追究する学習スタイルをとっていることや、活動期間の半ばでコース内で活動・研究の成果を発表し合う機会を設け、互いの研究の成果と以降の活動の修正をおこなうなどの活動を取り入れるなども、同様の考えによる。コース内での発表会やMET全体発表会を設定していることも同様である。 METが終了する12月におこなうMET全体発表会は、他者の活動から学ぶ機会であると同時に研究成果の最終の発表の場である。発表会には全校生徒だけでなく、保護者や大学からも参観者がある。その大勢のなかで自分たちの一学期間の研究成果を発表するのである。発表者はコースの代表者として、コース内でそれまで培ってきた「他者に伝える」ことの総まとめとして、聴き手に分かりやすく、かつ興味をひくように自分たちの研究成果を発表する。一方聴き手は、他のコースがどのような活動や学びをしたのかMETノートにメモしていく。情報発信・聴取に加えて、発表のあとには質疑応答の時間をとることで、双方向の学びができるようにしている。 全体発表会後には、コース毎にA3用紙1枚に研究内容をまとめた掲示物を作成している。作成されたまとめプリントは、全体発表会同様、学習成果の共有を考えて掲示している。次年度のMETガイダンスの折にも再度掲示し、コース選択に役立たせている。 このように、課題を追究するにとどまらず、双方向の学び合いや表現力育成を考えて、さまざまなしかけを学びの中に幾度も取り入れていることは、本校MET学習カリキュラムの特徴である。 |
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4 METの課題と展望 本校METは、教科横断型の学習として、教科で学んだことの知の総合をめざす。また(@)課題設定・解決力 (A)情報収集・活用力 (B)人と関わる力を身につけさせること をねらいとしている。本校の現状を振り返ると、これら本校のMETでねらう力の学びの環境は一応整えられているとはいうものの、これらの力がどのような力を指しているのか、そしてどこまでをめざすのかが明確でない点が課題と考える。活動ありきの学習になったり、目に見える「できた」や「わかった」だけに意識がいってしまったりと、本来の総合的な学習設置のねらいからはずれないためにも、評価について明らかにしておく必要がある。また、学習内容・活動については、生徒が意欲を持って取り組めるように、さらに創意工夫する必要がある。担当者が解説したいテーマではなく、生徒に学ばせたいものとすることもひとつではないだろうか。教員の入れ替わりが頻繁な昨今でもあり、本校の総合的な学習がめざすものについて、全教員が把握した上での学習実施とすることも勿論である。改善を加え、本校のMET学習を意義あるものとしていきたい。 本校の総合的な学習は、今後ますます必要となる「生きる力」、言語活動の充実、知識の総合、協働する力の育成などに十分寄与できると考えている。子どもたちが社会に出て活躍する姿・その時に必要となる資質・能力を具体な姿にして、それがMET学習で育成できるよう、教職員一同努力したい。 < 文責 藤原みつる > |
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活動の様子を、「つゆくさフォトアルバム」で、紹介します。 | ||||||||
平成23年10月12日(水) 2・3年生MET学習は6回目 8月31日より、MET学習が始まっています。METとは、本校の「総合的な学習」の中心をなす活動で、生徒が自ら課題を設定し、「教科等での学習」と「体験活動を通じた学び」を総合しながら、各自が課題解決を図る学習の時間です。この活動は、生徒が自ら「学びの開拓者」となり、自身の世界を広げていくことを期待して「Momoyama Explorers' Time」と名づけられました。今年度も15のいろいろなコース〔@共に生きよう!ハートフル AHello Newspaper B法と社会と私たち C身近なことばについて考えよう Dかたち E文化を探究してみよう F附属桃山工務店 G野鳥博士入門(バードメイト) H不思議発見!!京の科学系博物館を探る I美術館に行こう! Jスポーツナビ Kスポーツを科学しよう! Lこどもの食(安全編) M地球規模で考えよう!〜環境とエネルギーの未来〜 N京都から世界を見よう・考えよう〕で学習が進められています。6回目の今日「Hello Newspaper」「京都から世界を見よう・考えよう」コースでは、外部講師や大学生をお迎えして、高度な学習が進められていました。全11回の学習は12月16日の全体発表会で学習成果を報告します。1年生は「PreMET」として、課題解決学習の方法などを学んでいます。 活動の様子はこちらをご覧ください。 |
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平成23年12月16日(金) MET全体発表会を開催しました METの全体発表会を12月16日(金)に開催しました。METとは、本校の「総合的な学習」の中心をなす活動で、生徒が自ら課題を設定し、「教科等での学習」と「体験活動を通じた学び」を総合しながら、各自が課題解決を図る学習の時間です。この活動は、生徒自らが「学びの開拓者」となり、自身の世界を広げていくことを期待して「Momoyama Explorers' Time」と名付けられています。今年度も15のコースが設定され、9月より週2時間ずつの学習をおこなってきました。コース代表者は、約3ヶ月間の学習成果を、パワーポイントや映像を使ってしっかり発表しました。1年生PreMETも、伏見の「歴史」「文化・産業」「町」について、調査したことをもとに、グループ毎に発表をおこないました。活動の様子はこちらをご覧ください。 |
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平成23年度のMET活動内容は、こちらをご覧ください。 不思議発見!!京の科学系博物館を探る / 美術館へ行こう / 身近なことばについて考えよう / こどもの食 / Hello Newspaper / 野鳥博士入門(バードメイト) / 附属桃山工務店 / 京都から「世界を見よう・考えよう」 / 法と社会と私たち / 文化を探究してみよう / 地球規模で考えよう!〜環境とエネルギーの未来〜 / スポーツナビ / かたち / スポーツを科学しよう! / 共に生きよう!ハートフル / |
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平成23年度のPreMET活動内容は、こちらをご覧ください。 伏見の「環境(1,2)」「酒造」「町並み」「幕末」「神社仏閣」 |
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2010年度の活動は、こちらをご覧ください。![]() |